アムステルダム市が、混雑地域でのファットバイク(タイヤ幅7センチ以上の電動自転車)を禁止する方針を明らかにした。市は近年増加する苦情や安全上の懸念を受け、一般地方条例(APV)を活用した独自規制の導入を検討している。最初の対象エリアは、同市で最も利用者の多い公園である Vondelpark(フォンデル公園) が有力とみられている。
■ 苦情の増加と安全面での問題が背景
市によれば、ここ1〜2年でファットバイクに関する苦情が急増しているという。特に公園内や歩行者の多い地域において、以下のような報告が目立つ。
- 高速走行による危険行為
- 歩行者との接触リスクの増大
- 車体の大きさによる通行空間の圧迫
- 改造車両による騒音問題
アムステルダム市は、「市民からの苦情は継続的に寄せられており、現状は看過できない」と述べ、対策の必要性を強調した。
■ 国の法整備が進まず、市が独自に規制へ
ファットバイクは法律上、一般的な電動自転車(e-bike)に分類される。
そのため、国として明確に区別して規制する法的根拠が乏しく、対策が遅れている現状がある。
この状況を踏まえ、市は APV(一般地方条例) を用いて、独自の禁止措置を導入する形を検討している。APV は、市内の特定エリアにおける特定の乗り物の利用制限を可能にする規定で、過去には ビールバイク(Beer Bike) を市中心部から排除する際に活用された。
市は同条例に基づき、
「タイヤ幅7センチ超の電動自転車」=ファットバイク
と定義し、混雑エリアでの通行を禁止する案を提示している。
■ 初の禁止エリアは Vondelpark を想定
市が最初に規制対象とする見込みなのが Vondelpark である。同公園は観光客や市民に最も利用される公園であり、歩行者、自転車、ジョガーなどが混在するエリアとして知られる。
市当局によれば、Vondelpark 内でのファットバイクの高速走行や、歩行者との接触寸前の事例が複数報告されている。いくつかの事故や救急搬送に関するデータも確認されており、「最初に対策すべきエリア」であるとの位置づけがなされている。
禁止措置が成立すれば、今後他の公園や混雑地域にも規制が拡大される可能性が高い。
■ 規制に対して懸念の声も
一方で、ファットバイク利用者からは規制に対する懸念も上がっている。ファットバイクは通学や通勤、買い物など日常の移動手段として広く利用されており、特に若年層や自家用車を持たない世帯にとって重要な交通手段となっている。
- 中長距離移動のしやすさ
- コスト面で優位性がある
- e-bike よりも安定性が高い場合がある
こうした理由から、「規制が生活の不便につながる」との指摘もある。
■ 市議会での審議と法的課題
今回の禁止案は、現段階ではまだ正式決定ではない。
今後、市議会での審議を経て採決される必要がある。また、反対派が法的に争う可能性もあり、条例が最終的に認められるかは未確定である。
市は、ビールバイク禁止の前例を根拠として挙げているが、ファットバイクが一般的な移動手段である点から、今回の措置はより複雑な判断を伴うとみられている。
■ 他都市への波及可能性と今後
アムステルダムの動きは、同様の問題を抱える他都市にも影響を与える可能性がある。ロッテルダム、ユトレヒト、デン・ハーグなどでもファットバイク関連の苦情は増加しており、アムステルダムの事例が規制モデルとなることが予想される。
アムステルダム市が検討するファットバイク禁止策は、混雑地域の安全確保を目的とするものだが、同時に利用者の生活にも影響を与える可能性がある。
都市の公共空間をどう守り、どこまで移動の自由を制限するのか。
この問題は、単なる交通政策を超えて、今後の都市づくりの方向性を問うものとなっている。
今後の市議会審議や司法判断により、ファットバイクの扱いは大きく左右される見込みで、アムステルダムは重要な局面を迎えている。







