オランダの外食業界にとって、今週は大きな祝福の時となった。ミシュランガイド2025年版において、国内5軒のレストランが初めて星を獲得し、さらに2軒のレストランが二つ星に昇格した。また、持続可能なガストロノミー(美食)への取り組みが評価され、2軒のレストランがミシュラングリーンスターを授与された。
初のミシュラン星を獲得した5軒のレストラン
今週初め、マーストリヒトで行われた授賞式にて、以下の5軒が新たに一つ星を獲得した。なお、2024年版では10軒が新規掲載されたため、今年はやや控えめな結果となった。
- Created(エイスデン)⭐︎
- GEM.(ヘメルト)⭐︎
- Olde Marckt(アルテン)⭐︎
- Choux(アムステルダム)⭐︎
- CUE(アムステルダム)⭐︎
- Novaela(デルフト)⭐︎⭐︎
- Restaurant Calva(ノートドルプ)⭐︎⭐︎
これら7軒のうち、上記5軒が新たに星を獲得し、2軒が二つ星に昇格したとされる。
三つ星を維持した「De Librije」
オランダ・ズウォレ(Zwolle)にある**「De Librije(デ・リブリイェ)」**は、オランダ美食界の象徴的存在であり、長年にわたりミシュラン三つ星を保持し続けている名店である。
このレストランは、単なる高級レストランではなく、「食」を通して自然、地域、そして人とのつながりを表現する場として知られている。
歴史とコンセプト
「De Librije」は、1993年に**ジョニー・ボーア(Jonnie Boer)氏とその妻でソムリエのテレース・ボーア(Thérèse Boer)**氏によって創設された。当初から地元オーバーアイセル州の食材にこだわり、オランダの大地と四季を感じさせる料理を提供してきた。
店名の「Librije」とはオランダ語で「図書館」を意味し、実際にかつて修道院の図書館として使われていた建物を改装してレストランとして使用している。その荘厳で静謐な空間は、食体験を一層深いものにしている。
ジョニー・ボーア氏の料理哲学
ジョニー・ボーア氏は、地元産の野菜、魚、肉、野草などを中心に、自然の恵みを最大限に生かした独自の料理スタイルを築いた。
彼の料理は、単なる「高級料理」ではなく、オランダの風土と文化を皿の上で再構築する芸術と評される。
調理法や盛り付けには革新性がありながらも、素材の持つ力を決して損なわない。例えば、地元の川魚を発酵素材と合わせるなど、伝統とモダンを融合させる技法で知られている。
2024年の悲報と、2025年の追悼授賞
2024年4月、ジョニー・ボーア氏が急逝したというニュースは、オランダ国内だけでなく世界中の料理界に衝撃を与えた。
その年の授賞式では、彼の功績を称え、特別に**「メンターシップ・アワード」**が追贈された。これは彼が長年にわたり多くの若手シェフを育て、オランダ料理界の発展に多大な影響を与えたことを称えるものである。
妻のテレース氏は現在も経営を支え、ボーア氏の理念と精神を受け継ぎながら、変わらぬ品質と感動を提供し続けている。
オランダ国内のミシュラン星付きレストランは合計119軒に
今回の発表により、オランダ国内のミシュラン星付きレストランは以下のような構成となった。
- 一つ星レストラン:98軒
- 二つ星レストラン:20軒
- 三つ星レストラン:1軒
合計で119軒が星を保持していることになる。
また、環境や地域社会への配慮が評価されるミシュラン・グリーンスターは23軒に達し、コストパフォーマンスに優れたレストランに贈られるビブグルマンには78軒が選出された。
サステナブルな美食への道
今回グリーンスターを受賞した2軒は、「より良い未来のための継続的な取り組み」が高く評価された。オランダの料理界では、単に味を追求するだけでなく、地球環境や地域社会に配慮したガストロノミーへの意識が一層高まっている。
2025年版ミシュランガイドでは、オランダのレストラン界が依然として高いレベルを維持していることが示された。新たな星を獲得したレストランたちは、今後さらに国内外から注目を集めることになるだろう。






