オランダでは、サイズや重量に対する手荷物規制強化や航空税の高騰で飛行機離れが進む。ベルギー・ドイツの空港利用も増加傾向。航空会社ごとにバラバラな手荷物規定が乗客に混乱を招き問題に。

オランダでは、手荷物に関する規制の強化や追加料金の導入を受けて、飛行機での移動を避ける旅行者が増加している。調査によると、オランダ人旅行者の37%が飛行機以外の移動手段を検討しており、近年は国外の空港から出発する人も急増している。

手荷物のルール変更で旅行手段に変化

これまで多くのオランダ人は、スピードと低価格を理由に飛行機での旅行を選択してきた。実際、ヨーロッパ域内では鉄道よりも飛行機の方が約50%安い場合もある。

しかし、最近になって手荷物のサイズや重量に対する規制が厳しくなり、無料の機内持ち込みを廃止する航空会社も出てきたことから、状況は変わりつつある。保険会社が実施した調査によると、27%が「飛行機を使う頻度を減らしたい」と考えており、37%は車や公共交通機関といった「別の移動手段を検討している」と答えた。また、32%は「追加料金を避けるために旅行先そのものを変更する可能性がある」としている。

航空会社の選択にも影響

調査では、回答者の3分の2が「手荷物ルールが航空会社の選択に影響を与えている」と答えている。例えば、ライアンエアー、ウィズエアー、イージージェットなどのEU系格安航空会社では、手荷物の寸法規定がそれぞれ異なっており、基準を少しでも超えると追加料金が発生する。そのため、多くの旅行者は航空券の価格だけでなく、手荷物の条件も考慮するようになっている。

一方で、多くのオランダ人は利便性を優先し、追加料金を支払ってでも飛行機を利用している。調査によれば、58%が「預け荷物に追加料金を支払うことをいとわない」と答えており、44%は「機内持ち込みだけで済ませる旅行は減った」としている。

オランダの空港コスト上昇で国外出発が増加

飛行機利用離れの背景には、手荷物ルールだけでなく、オランダ国内の空港利用に伴うコスト増加もある。航空券そのものに加え、出発税や駐車場料金の高騰が旅行者の負担となっている。現在、オランダの空港から出発する際の航空税は約30ユーロに上昇しており、これはドイツの2倍、ベルギーの15倍にあたる。

さらにスキポール空港では2025年の航空会社向け料金を41%引き上げており、多くの航空会社がその分を運賃に上乗せしている。一方、ベルギーでは1日1ユーロで駐車可能な空港もあり、出発税や追加費用を合わせると、国外空港から出発することで1人あたり50〜150ユーロの節約になるという場合もある。

このため、オランダ国内から車でベルギーやドイツの空港へ向かう旅行者が増加している。2024年にはオランダ人による国外空港利用が前年より20%増加し、パンデミック以前は6%程度だった国外出発が、現在は約25%に達しており、3分の1以上のオランダ人が国外空港を選択肢として検討している。

実際、ユトレヒトから車で約90分の距離にあるドイツのヴェーゼ空港では、昨年の利用者のうち40%がオランダ人であった。こうした需要に応える形で、ドイツの複数の空港が新たな路線を開設し、施設の拡張や改修を進めている。

EU、無料手荷物の標準化を提案

背景には、航空会社ごとにバラバラな手荷物規定が乗客に混乱を招いているという事情がある。実際、EUの裁判所は2011年に「合理的なサイズ・重量の手荷物に対し追加料金を課すことはできない」とする判決を下しているが、各社の運用にはばらつきがあるのが現状である。

こうした状況を受け、EUの運輸大臣らは、EU内の航空会社に対し「無料持ち込み手荷物のサイズを標準化する」提案を行った。提案された標準サイズは「40×30×15センチ」で、キャスターや取っ手を含み、機内の座席下に収まる程度の大きさとされている。

手荷物規制の強化が旅行者の行動にどれほど影響を与えるか、今後も注目されている。

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