オランダにあるもう一つのクリスマスであるシンタークラース。その伝統行事の裏で人種差別問題が年々、大きくなる。その問題とは!?

シンタークラースとは:

シンタクラース(Sinterklaas)はオランダにあるもう一つのクリスマス。オランダにおいてはクリスマスと並んで大事な伝統行事の日と位置付けられている。

シンタクラースは、クリスマスのサンタクロースに少し似ているが、異なる伝統を持つ存在である。シンタクラースは12月5日または6日の夜に、子供たちにプレゼントを配る伝統的なキャラクターである。サンタクロースのようにクリスマスに関連しているわけではなく、独自のオランダの伝統的なお祭りである。

シンタクラースは、白いひげを生やし、司教のような赤と金の装いを身につけた姿である。彼はスペインからやってきて、オランダの港に船で到着するという伝承がある。彼の到着は子供たちにとって特別な瞬間で、パレードやお祭りが開かれることもある。

伝統的に、シンタクラースは良い子供たちにはお菓子やプレゼントを持参し、黒い顔のズワルトピートと呼ばれる助手がお菓子を配ることが一般的となっている。近年、この伝統に対する人々の見解が分かれるようになっており、ズワルトピートのキャラクターについての議論が盛んになっている。多くのオランダ人にとっては、ズワルトピートはオランダの冬の伝統的なキャラクターと見なされているが、近年では、このキャラクターは人種的な意味合いから問題となっており、潜在的な人種差別の象徴と見なされる傾向がある。

実際に今年もこのズワルトピートに反対するデモが起こっており、逆にズワルトピートを支持する団体との衝突が起こっており、卵、花火、缶を投げ、さらには煙幕も投げられた。警察も出動し衝突を制圧し、9人の逮捕者が出る事態となった。

ズワルトピートの容姿:

ズワルトピートは伝統的には顔に黒いメイクを施し、カーリーヘアで、カラフルなルネサンス風の服装を身にまとっている。彼はシンタークラースの行事で子供たちにお菓子やプレゼントを投げる役割を果たしている。

ズワルトピートの歴史:

実はズワルトピートの歴史ははっきりしていない。キャラクターの起源については論争があり、歴史的な証拠についても異論がある。

ズワルトピートの初めての文献的な証拠は、1850年代にアムステルダムの教師によって書かれた児童書に見られている。この本では、ズワルトピートはシンタークラースの黒い助手として描かれており、「召使い」としか呼ばれていなかった。また賃金ももらっていなかったと考えられており、奴隷制度に関連していると歴史家たちは考えている。

ズワルトピートをめぐるの論争:

ズワルトピートに対する論争は、その外見が人種的なステレオタイプを強化しているという点で非難を浴びている。特に黒いメイクが差別的で人権を侵害するものだと考える人たちが多くいる。対立する立場の人々は、ズワルトピートは無害な伝統の一部であり、人種差別とは無関係だと主張。彼らは伝統を継続する権利を守るべきだと考えており、自分たちの文化的アイデンティティを理解しない外部の人々によって奪われるのではないかと危惧している。

現在の状況と変容:

2020年、「Black Lives Matter」の抗議運動と国際的な反人種主義運動がオランダでも注目され、社会における人種差別に対する意識が高まった。これにより、ズワルトピートに対する批判的な声が増加し、変化が始まっていった。

多くの都市ではシンタークラースの行事が禁止されたり、内容を変更された形でのみ許可されるようになった。また、多くの店舗や一部ソーシャルメディアプラットフォームがズワルトピートのイメージを排除する方針をとった。人種差別に反対する抗議団体が2018年に17のオランダの都市で抗議デモを組織し、これが大きな波紋を広げた。

黒人の人々は、ズワルトピートによって差別的な言葉で呼ばれたり、侮辱されたりする経験をしたと報告されている。これに対抗するため、変革を求める声が高まってきている。

最近では、FacebookやInstagramを含むソーシャルメディアプラットフォーム、AmazonやGoogleなどもズワルトピートのイメージを禁止した。また、多くの図書館もズワルトピートを描いた本を撤去した。

2020年には、オランダの首相マーク・ルッテが初めて、この伝統に人種差別が存在することを認め、ズワルトピートに対する見解を変えたと発言。彼は政府が介入するべきではないとし、将来的にはほとんどの場でズワルトピートが見られなくなるだろうと見解を示した。

このような変化が起こる中で、ズワルトピートの容姿を変更する必要があると考える人々が増えており、いくつかの自治体では、黒いメイクの代わりに異なる色のキャラクターを提案している。

人種差別に関する議論がオランダでは過去に比べて増加しているが、依然として多くの人が伝統に基づく行動を差別的だと認識していないため、議論が進まないことがある。人種差別に対する議論がタブー視され、その言葉自体が不快感や防御反応を引き起こすことがある。

一部の自治体では、異なる色のキャラクターなどの提案により、伝統を尊重しながらもズワルトピートの容姿に変更を加える動きが進んでいる。

将来的には、この伝統的キャラクターの容姿が変更される可能性が大きい。議論は今後も続き、社会全体での認識の変化が求められているのが現状である。

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