オランダが来年1月からEU域外から届く150ユーロ以下の通販荷物に対して新たに手数料を導入へ。Sheinなどの増え続ける中国系通販への対策。

オランダ政府は、EU域外から届く小額の通販荷物に対し、新たに商品単位の「扱い手数料」を課す方針を示した。草案によれば、1商品につき2ユーロ、平均的な注文では約6ユーロの追加負担となる見込みで、2026年1月の導入を視野に入れる。主に中国系通販サイトからの荷物が対象で、現行制度の免税枠を利用した安価な商品の急増を抑え、税収確保、国内小売保護、そして税関業務の正常化を目的としている。

何がどれくらい変わるのか

対象となるのは、EU外から到着し価格が150ユーロ以下の小口荷物である。現在はこの範囲の荷物が大量に免税入荷しており、特に中国からの注文が爆発的に増えていた。

手数料は 商品種類ごとに2ユーロ
1つの箱に3種類の商品が入っていれば6ユーロ加算される、というシンプルな仕組みである。
例えば同じTシャツ4枚であれば、商品1種類扱いで2ユーロの扱いになる見込み。

この制度が現状の荷物量に適用されれば、年間約20億ユーロの収入につながるとされる。手数料の支払い者は名目上は運送業者だが、実際には消費者への転嫁がほぼ確実と予測されている。

税関が逼迫する現状と周辺国の動き

オランダ税関は、急増する荷物の処理に限界が近づいている。1日あたり約100万件もの小口荷物が到着し、その8〜9割がAliExpress、Temu、Sheinといった中国系通販からだとされる。

さらに、オランダに到着する荷物の多くは最終目的地が他EU加盟国であり、オランダは「EUの玄関口」として過度に利用されている状況がある。このまま周辺国が独自の手数料制度を導入し、オランダが導入を遅らせた場合、物流企業がオランダに荷物を集中的に迂回させる恐れがあり、ロッテルダム港やスキポール空港の運用が麻痺する可能性も指摘されている。

■ 日本からの荷物はどうなる?

● 対象になる荷物
  • EU域外 ⇒ 日本は当然対象となる予定。
  • 対象は価格が 150ユーロ以下 の荷物。
  • 商品ごとに 1商品=2ユーロの取り扱い手数料、少額(例:書籍1冊、服1枚)でも 2ユーロ必ず追加。複数注文すると手数料が積み上がる仕組み。

例えば:

内容手数料
本1冊だけ商品1点2ユーロ
服2種類+雑貨1点商品3点6ユーロ
同じTシャツ4枚商品1種類扱い2ユーロ

※ 重要なのは「商品点数」ではなく 商品“種類(product line)” で計算される点。

欧州の動きと導入時期のズレ

EUレベルでも同様の制度が検討されているが、実施時期は2026年11月以降と見込まれており、加盟国間の足並みは揃っていない。こうした遅れを受け、フランス、ベルギー、ルクセンブルクは独自の課金制度を早期導入する方針を示しており、オランダも歩調を合わせる姿勢を見せている。

期待される効果と今後の課題

手数料収入の一部は税関強化に充てられる見通しである。これにより、物流の健全化や安全性検査の確保が期待される。また、国内小売業者が中国系通販との極端な価格競争にさらされる状況の改善も狙いとされる。

一方で、利用者負担の増加は避けられず、通販ユーザーからの反発も想定される。また、隣国の導入タイミングにズレが生じた場合、荷物の流れが変化し、手数料の効果が部分的に薄れる懸念も残る。

今回の措置が示すもの

この新手数料制度は、低価格の海外通販に依存する消費行動と、国内インフラの持続性との間でバランスを取り直す試みである。短期的には消費者の負担増となるが、長期的には税関の健全な運用、国内経済の安定、物流機能の維持といった広範な目的が背景にある。EU全体の制度整備が遅れるなか、各国が独自措置に踏み切る流れは、今後のEC市場の構造にも大きな影響を与えそうだ。


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