ロッテルダムの年越し花火大会、結局開催へ。消滅危機からの復活劇。

ロッテルダムの年越し風物詩といえば、Erasmusbrug(エラスムス橋)を舞台にした大規模な花火大会だ。川面に反射する光、街の象徴である橋を背にした演出、そして何万人もの人々が一斉に年越しを迎える一体感。
しかしこの冬、その象徴が“静かに消える”可能性があった。

だが、結末はまるでドラマの最終回のようだった。市議会が方針転換し、資金を拠出する決断を下したことで、花火大会はギリギリのタイミングで息を吹き返した。


■ 予算削減でまさかの中止発表

ロッテルダム市は昨年、予算削減の一環として花火大会への資金提供をやめる方針を明らかにした。
これにより、象徴的イベントは“今年は中止”という報道が広まり、地元でも衝撃が走った。

クラウドファンディングが立ち上がり、市民から10万ユーロもの寄付が集まったものの、必要額は約100万ユーロ。
届かない金額ではないが、市民の善意だけで支えるにはあまりにも規模が大きい。
掲示板にはこんな冷静な意見も並んでいた。

「100万ユーロ規模の花火大会をクラファンだけで維持するなんて無理に決まっている」

実際、このコメントのとおり、資金不足は解消されず、中止の流れは決定的に見えた。


■ 市議会、土壇場で“待った”をかける

しかし、ここから局面が変わる。
市議会内部で2日間にわたって議論が紛糾し、複数の代替案が提示された末、最終的に“予備基金からの追加拠出”という形で花火大会の開催が承認された。

反対したのは動物福祉を重視する政党 PvdD(動物の党)のみ。
多数派の賛成により、イベント復活が正式に決定した。

しかも、花火の発注期限はすでに延長されていたほどのギリギリ具合。
市議会の判断がもう少し遅れていれば、物理的に開催が不可能になるところだった。


■ 開催の背景には「安全」と「街の魅力」

市議会の判断には、単なる伝統維持以上の理由がある。

  • 市販花火の規制が強まる中、個人の打ち上げより“統制された一大イベント”の方が安全性が高い
  • 冬のロッテルダムを盛り上げる観光資源として価値が高い
  • 市内の騒音・混乱を抑えるためにも、中央集約型のイベントは効果的

主催者もこう語っている。

「花火は人々を集め、街に活気を生む。この冬のロッテルダムを照らす存在であり続けてほしい」


■ 来年以降はどうなるのか

今回の“復活劇”は、あくまで一時的な延命措置という見方もある。

  • 市の予算削減方針が変わるわけではない
  • 毎年100万ユーロ規模の支出を続けるかは今後の議論次第
  • 市民の寄付やスポンサー依存には限界がある
  • 環境・動物福祉・騒音問題など、反対意見も根強い

今年は開催できても、来年の保証はない。この“瀬戸際感”はしばらく続きそうだ。


■ それでも花火は、橋の上に帰ってくる

結果として、ロッテルダムの冬の象徴は再び夜空を彩ることになった。
中止の発表から、クラウドファンディング、議会の逆転判断、ギリギリの発注…まるでストーリー仕立てのような数週間だった。

花火は一瞬で消える光だが、街に残す記憶は長く残る。
今回の騒動は、ロッテルダムにとってその象徴の再確認にもなったのではないか。

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