8月13日実施のオランダ語試験(inburgering)で大規模不正発覚、試験問題と模範解答がSNSで拡散され900人以上が再試験へ。問題の持ち出しはアナログな手口!?

8月3日に行われたスピーキング試験が無効に

オランダ語のinburgering(統合)プログラムの一環として実施されたB1レベルのスピーキング試験が、不正行為の発覚により無効とされた。問題が発覚したのは、2024年8月13日に行われた試験で、約900人が再試験を受ける必要がある。

この決定は、試験問題と模範解答がWhatsAppグループ上で流出していたことが判明したためである。試験を監督する試験・評価委員会(CvTE)は「試験の秘密問題が外部に出回り、多数の受験者がその情報を共有した」と認めた。流出した問題が実際に何人に渡ったかは不明だが、CvTEは「数百人規模で情報が広がった可能性が高い」としている。


試験の仕組みと不正の手口

問題となった「Nederlands Spreken(スピーキング試験)」は、受験者がコンピューターの画面に表示される日常的な状況に音声で答える形式で行われる。

  • 試験時間は約25分
  • 短い質問に即答する問題
  • 特定のテーマについて2分ほど話す課題

一部の練習問題は事前にオンライン公開されているが、本番で出題される「実際のテスト問題」は非公開で、絶対に外部に漏らしてはならない為、試験前に誓約書にサインが必要となっている。

試験会場では携帯電話や紙の持ち込みは禁止されているため、CvTEは不正の手口について、受験者の一部が問題を記憶して持ち帰り、後にWhatsAppで共有したとみている。共有された内容には模範解答例まで含まれていたという。


受験者への影響と怒りの声

今回の決定により、6つの試験会場で試験を受けた約900人全員の結果が取り消しとなった。対象者には、オランダへの移民として統合が義務付けられている新来者だけでなく、駐在員や留学生も含まれている。

DUO(Dienst Uitvoering Onderwijs、教育実施機構)は受験者全員に書簡を送り、「この試験を全員無効とせざるを得ない」と伝えた。再試験は無料で受験できるとされているが、交通費や子どもの預け先、勉強時間のロスといった負担は個人が背負わなければならない。


法的なタイムリミットと罰則の可能性

オランダでは、多くの移住者が3年以内に試験を全て合格することが法的に義務付けられている場合が多く、この期限に間に合わない場合、政府から罰金が科される可能性がある。

そのため、今回の再試験決定は多くの受験者にとって極めて深刻な問題だ。試験日程の延期により、統合プロセス全体が遅れるリスクが生じており、「真面目に勉強してきた人ほど被害を受ける」という状況になっている。


今後の課題

CvTEは再発防止に向けて調査を進めているが、試験問題の記憶による持ち出しというアナログな手口であるため、完全な防止は容易ではないとみられる。
今回の事件は、オランダ社会での統合プロセスを真剣に取り組む受験者に対し、制度そのものへの不信感を生む結果となった。特に、不正に関わっていない多数の受験者にとっては、「努力が無駄になった」という強い失望が残っている。

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