オランダ、2027年から18歳未満のEバイク・電動自転車の利用者にヘルメット着用を義務化へ。

背景:急増するファットバイク事故と脳損傷

オランダ政府は、2027年から18歳未満のEバイク・電動自転車の利用者に対してヘルメット着用を義務づける方針を発表した。特に若者の間で人気の「ファットバイク」をめぐっては、事故や危険走行が大きな社会問題となっている。オランダ政府は「2024年には若年層の電動自転車による脳損傷が救急搬送の件数で6倍に増えた」と危機感を示した。

ファットバイクとは?

ファットバイクは、幅の広い極太タイヤを備えた自転車で、もともとは雪道や砂地といった悪路走行を目的に開発された。オランダで見かけるものの多くは電動アシスト付きで、平地でも軽い力でスピードを出せるのが特徴。
その迫力ある外観と安定感、さらに改造やカスタマイズの自由度から、近年は若者の間でファッション的アイテムやステータスシンボルとして人気が急上昇している。

しかし、オフロード向け設計であることから都市部でのスピード超過や交通ルール無視といった行為が目立ち、各地で安全面の問題が浮上している。

年齢基準での義務化と新たな交通政策

政府は当初、ファットバイクに対して年齢制限や規制を求めていた。しかし、調査ではファットバイクとEバイク・電動自転車を明確に区別するのは困難であることが判明した。そのため政府は「18歳未満を対象としたヘルメット義務化」「行動変容へのアプローチ」「品質基準マーク導入」という3つの柱で政策を進める。法案は2026年秋に提出され、2027年から施行される予定だ。

さらに、未成年がEスクーター(電動キックボード)など他の軽電動車両に流れるのを防ぐため、対象拡大も検討されている。

地方自治体と都市部の反応

自治体からは歓迎の声が多い。オランダ自治体協会は「多くの市でファットバイクによる危険な状況が発生しており、全国的な規制を期待している」とコメント。アムステルダム市は「子どもを守り、Eバイクの危険性を明確に示す重要な一歩」と評価した。デン・ハーグ市も「ようやく全国的な措置が取られることは良いこと」と支持を表明した。

安全団体と救急医療の視点

交通安全団体「Veilig Verkeer Nederland(VVN)」は、この決定を「良い第一歩」と歓迎している。VVNによれば、Eバイク事故で強く転倒した場合、深刻な脳損傷につながる危険が高い。子どものうちからヘルメット着用を定着させれば、大人になっても継続される可能性があり、長期的に安全性向上と医療費削減に寄与するとしている。

自転車業界と団体からの懸念

一方で、自転車関連団体は懐疑的だ。彼らは「本当の問題は改造されたファットバイク、違法輸入、危険運転であり、ヘルメット義務化では根本的な解決にならない」と主張。さらに「国民の大多数はヘルメット義務化に反対しており、支持を欠いた政策は守られにくい」と指摘する。

警察組合ACPも「取り締まりの優先度や人員不足が課題になる」と懸念を示し、政府と保護者による啓発活動の重要性を強調した。

製造業界の立場

ファットバイクメーカー側は、対象をファットバイクだけに限定せず全てのEバイクに適用すべきとする立場である。あるファットバイクメーカーは「どんな自転車でも問題を引き起こす可能性がある。大半の顧客は成人であり、売上への影響は限定的だ」と述べた。

安全性と利用促進のはざまで

Eバイク利用の拡大とともに事故や救急搬送が急増する中、18歳未満へのヘルメット義務化は象徴的な一歩となる。しかし、自転車文化が根強いオランダでは「自由なサイクリング」と「安全確保」のバランスが大きな論点となる。2027年の施行に向けて、国民的な合意形成と実効性ある対策が問われることになる。

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