オランダ鉄道会社NSは、Revolut、Paysafe、Vividといった一部のオンライン銀行サービスが発行するデジタルカードを、2025年7月1日から使用不可とした。理由は、これらのカードを利用した不正乗車が横行しているため。
一時的なデジタルカードが悪用される仕組み
OVpayは、物理的なカードがなくてもスマートフォンのデジタルカードで公共交通機関にチェックイン・アウトできる非接触決済システム。通常、1日の移動履歴をまとめて夜に清算する仕組みになっている。この仕組みを逆手に取った不正利用が発生していた。
具体的には、RevolutやPaysafeなどのアプリで即時発行できる一時的なデジタルカードを使い、乗車後にそのカードを削除することで運賃の引き落としを逃れるという手口。カードが存在しなければ請求もできないという弱点が突かれたかたちである。
一時的なデジタルカードを使って乗車 → 降車後すぐにカードを削除 → 運賃を支払わずに済ませるという手口が多発していた。
NS「やむを得ずブロック措置を取った」
NSはこの問題を「深刻な不正」と表現し、対策として該当するデジタルカードのブロックを決定した。影響を受けるのは主に鉄道利用者で、他の公共交通機関では現時点で大きな問題にはなっていない。ただし、Paysafeに関してはすべての公共交通機関で使用不可となった。
NSの広報は「可能ならばブロックなどしたくなかったが、必要な措置だった」と説明。不正をしていない一般の利用者にも影響が及ぶ点については認識しているという。
各社の対応と今後
この不正利用の問題は以前からTranslink(OVpayの運営会社)およびNSが把握していたが、実際にサービスをブロックするのは今回が初。Revolut、Paysafe、Vividの3社には2025年5月の時点で警告が出されており、改善が見られなければブロックする方針が伝えられていた。
Revolutは現在、法的対応を検討中。Vividは技術的な解決策を開発中で、9月までに導入予定とのこと。ただし、最終的にブロックを解除するかどうかはTranslinkの判断に委ねられる。Paysafeは現時点で公式な反応を示していない。
今後の影響
今回の措置により、正規にデジタルカードを利用していた利用者が不便を被る可能性は高い。一方で、非接触決済と一時的なカードという技術の組み合わせが、セキュリティ面で新たな課題を浮き彫りにしたとも言える。今後、公共交通機関の決済システムとフィンテック企業の連携のあり方が問われることになりそうだ。