アムステルダムの高級フィットネスジム「Saints & Stars」で外国人清掃スタッフ搾取疑惑。パスポート没収・17時間労働・和解金による口止め提案も。

清掃スタッフに対する深刻な労働搾取が明るみに。

アムステルダムの高級フィットネスジム「Saints & Stars」では、フィリピン人およびインドネシア人の清掃スタッフ少なくとも23名が、過酷な労働条件のもとで働かされていたと報じられている。

オランダの新聞『Het Parool』の調査報道によると、スタッフはパスポートの提出を強要され、1日最大17時間働かされていた上、オーナーの別荘で4人が同じベッドを使って寝泊まりしていたという。一部の労働者は賃金も支払われず、これによりEU内の在留資格を失ったケースもある。

調査の過程では、労働者の証言やWhatsAppのメッセージ、写真、動画、音声記録、オランダ労働監督庁(Labor Inspectorate)とのメールなど、多数の証拠が確認されている。

次世代型のプレミアムジム「Saints & Stars」とは

Saints & Starsは「“Cross the Line”(自分の限界を越える)」というモットーを掲げる、高級ホテルやナイトクラブのような雰囲気のラグジュアリーなスポーツジムとなっている。

建物自体も、かつての教会や豪華な空間を活かしたリノベーションが施されており、非日常感を演出、光と音の演出を駆使した演出や豪華なアメニティが特徴となっている。

フラッグシップクラブ「Saints & Stars City」はアムステルダムの中心部にある旗艦店で、5フロア・2,500㎡の大型施設で、市内最大級の規模を誇る。高級スパ並みの設備(Dyson製品、プレミアムスキンケア、豪華シャワーなど)やコンシェルジュサービスも充実している。


最初の告発記事を掲載される

7月27日、『Het Parool』がこの問題を報じ、世間の注目を集めた。報道によれば、搾取は全店舗で行われていたとされ、特に「City」店舗が中心だったとされている。

同日、労働監督庁の特別捜査班が、ジムの経理担当者を文書偽造容疑で逮捕したとの報道もあった。また、ジム4店舗への強制捜査の結果、23人の不法滞在・無許可労働者が確認されたという。

これを受けて、労働者を支援する市民団体がクラウドファンディングを立ち上げ、開始からわずか数日で2万ユーロ以上が集まった。

ジムオーナーが謝罪と調査開始を表明

報道の翌日、「Saints & Stars」のオーナーである31歳のトム・モース(ヨーロッパ最大級のジムチェーン「Basic-Fit」創業者レネ・モースの息子)が動画メッセージを公開。報道内容に異議を唱えつつも、「問題があったなら謝罪する」と述べた。

モースによれば、清掃は外部業者に委託しており、その業者が人手不足だったため、EU内で労働許可を持つ人材を使用していたとのこと。ただし、対象となった労働者の国籍については言及を避けた。

また、報道後、ジムスタッフが「唾を吐きかけられたり、ボイコットや殺害予告まで受けている」として、従業員への誹謗中傷も批判している。

ジムとしても独自調査を開始すると発表し、清掃部門のマネジメントチームを一時的に業務停止処分とした。

元清掃員に対する口止め条件付きの和解金提案が判明

新たな情報によると、報道が出る数日前、解雇されたフィリピン人清掃員5名が弁護士と共にジムを訪れ、補償を求めた際、ジム側の弁護士から和解金として一人あたり5,000ユーロ(手取り約3,000ユーロ)の提案があったことが明らかになった。

ただしその条件には、「常に良い待遇を受けていた」と証言し、ジムに対して訴訟を起こさないという誓約をすることが含まれていたという。

清掃員たちはこの提案を拒否し、裁判で争う意向を示している。彼らの弁護士はコメントを控えている。

一方、「Saints & Stars」の広報はこの件に対し、「和解提案はしていない」と否定。「複数の顧客を代表する弁護士から請求があり、それにより話し合いが行われた」と説明している。

クラウドファンディングの支援も広がる

搾取被害を受けた清掃スタッフの支援を目的としたクラウドファンディングでは、8月初旬時点で3万3,000ユーロ以上が集まっている。発起人によれば、集まった資金は被害者に分配される予定。

真相解明と法的責任

オランダ労働監督庁の調査結果や、元清掃スタッフによる訴訟の行方が注目される。清掃業務の外部委託という構造が、責任の所在を曖昧にする可能性もある中、ジムの経営陣や清掃会社、そしてオランダ社会全体がどのように対応するかが問われている。

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