KNM(オランダ社会の知識)テストが実生活重視に改訂
2025年7月1日から、オランダの統合試験(inburgeringsexamen)における「オランダ社会の知識(Kennis van de Nederlandse Maatschappij、以下KNM)」の内容が変更される。これまでのKNMは、移民に対して「望ましい社会的行動」を学ばせる内容だったが、今後はより実用的な知識に重点が置かれる。
KNMではこれまで、近所付き合いや礼儀、社会的規範に関する問題が出されていた。たとえば「隣人の誕生日にどう対応するか」「近所トラブルが起きた時の対処法」といった質問があり、移民にとってもオランダ人にとっても難解な設問が多かった。移民統合の専門家によれば、「これらの設問は全てのオランダ人が共有しているとは言えない社会的規範や見解に基づいていた」という。
新しいKNMの内容とは?
新テストでは、以下のような具体的・客観的なテーマが中心となる:
- オランダの地理と歴史
- 社会保障の申請方法
- 離婚手続きの流れ
- 公的機関とのやり取り
DUO(教育実行機関)によれば、「行動規範」ではなく「知識の伝達」に焦点を移すことが目的だという。この変更により、移民がより自立して生活できるようになることが期待されている。
統合試験(Inburgeringsexamen)とは?
統合試験は、オランダに中長期的に住む移民に義務づけられている制度で、社会への適応を目的としている。試験は以下の複数の要素で構成される:
- オランダ語能力試験(読み・書き・聞き取り・会話)
- KNM(オランダ社会の知識)
- ONA(労働市場への準備状況)※一部対象者のみ
移民は上記の試験に合格することで、永住権の取得や市民権の申請が可能になる。
合格基準と試験実施
KNM試験では、40問中28問以上(70%)の正解が必要。受験前には守秘義務契約への署名が求められ、問題の流出を防いでいる。DUOの公式サイトでは模擬試験も公開されており、事前に練習することが可能である。
KNMの見直しにより、形式的な「社会への順応」から、より現実的な「生活への実用知識」へと移行が進む。移民にとって必要な知識が学びやすくなる一方で、依然として試験制度の負担やプレッシャーは残る。今後の制度運用とその効果に注目が集まる。