17世紀のオランダの田園風景をそのまま保存した屋外博物館のようなエリアのザーンセ・スカンス、あまりにも多くの観光客が押し寄せる為、2026年から入場料を有料化へ。風車の村が抱える観光の光と影。

アムステルダム近郊の生きた歴史村
オランダ北部、アムステルダムから電車でわずか20分。ザーン川沿いに広がるザーンセ・スカンスは、17世紀のオランダの田園風景をそのまま保存した屋外博物館のようなエリアである。風車、小さなチーズ工場、木靴工房、古民家、アンティークショップなどが軒を連ね、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえる。年間およそ260万人が訪れる、オランダ有数の観光地だ。

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■ 人気観光地が直面する課題
しかしこの人気が、村を悩ませている。あまりにも多くの観光客が押し寄せ、地域住民の生活に支障をきたしている。駐車場は常に満杯で、近隣住宅の私有地にキャンピングカーが停められるなどのトラブルが後を絶たない。地元自治体は、この「観光公害」への対応策として、2026年からの入場有料化を決定した。料金は一人あたり17.50ユーロの予定となっている。

■ 賛否分かれる有料化の動き
この決定には賛否が分かれている。ある住民は「やっと対策が取られる」と歓迎する一方で、地元商店の一部は反発しており、特に常連客を頼りにしている店は売上に影響を与えることを心配している。

■ 住民への配慮と代替案
そのため、住民に配慮した代替案として、「デューン方式」と呼ばれる仕組みが提案されている。フェンスなどの物理的な境界は設けず、チケットの提示を求められたときだけ見せるというシステムである。これにより、住民や常連客が自由に出入りできるようにしつつ、観光収入の確保も目指す。

ザーンセ・スカンスの魅力は、単なる観光スポットにとどまらない。風車の羽根がきしむ音、木靴を削る工房の香り、チーズの熟成庫に満ちるミルクの甘い匂い。全てが生きた文化財であり、オランダという国の原風景を今に伝えている。この場所を守るために、何が最善なのか。入場料は観光地の価値を守る手段となるのか、それとも地域の未来を狭める壁となるのか。今後の議論の行方が注目される。

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