派遣や短期契約、ゼロ時間契約など不安定な働き方に終止符。2027年施行のオランダの新法案。「同一労働・同一賃金」の原則に基づき、派遣社員にも正社員と同じ労働条件が適用される。

オランダ政府は、労働市場における過度な柔軟性(flexibilisering)を見直し、フレックスワーカー(派遣社員やオンコール労働者など)により多くの確実性を与えるための新しい法案を発表した。社会問題・雇用大臣がこの法案を下院に提出し、2027年1月から施行される予定である(一部は2026年から施行)。


背景:増えすぎた不安定雇用

オランダでは、EU諸国と比較しても不安定な雇用形態が非常に多く、約270万人がフレックス契約のもとで働いている。その中には、ゼロ時間契約や短期契約、派遣労働が含まれる。とりわけ、企業がフレックス雇用を利益の源として利用し、労働者を不安定な立場に置く構造が問題視されてきた。

労働組合は長らくこの流れに警鐘を鳴らしており、フレックス労働によって人々は住宅ローンの審査に通らず、家族を持つ計画すら立てられないという深刻な影響が出ている。


新法案の柱:3つの大きな改革

今回提出された法案は、以下の3点を中心に構成されている。

  1. 派遣労働者に正社員と同等の待遇を付与
    「同一労働・同一賃金」の原則に基づき、派遣社員にも正社員と同じ労働条件が適用される。さらに、不安定な雇用期間は1年に短縮され、それまでは1年半続いていた「即時解雇が可能な期間」が見直される。
  2. 短期契約の連続利用に制限
    雇用主は現在、3回の短期契約終了後、6ヶ月間の空白を空ければ再度短期契約を結ぶことができた。この「回転ドア」的構造が乱用されてきたため、今後はその空白期間を5年に延ばすことで、恒常的な短期契約の連続を防止する。
  3. ゼロ時間契約の廃止
    ゼロ時間契約は完全に廃止される。その代替として、最低勤務時間を明記した契約が導入される。例えば、10時間契約を結んでいる労働者は、最大でも13時間の勤務要請を受ける可能性があるが、それ以上の勤務は拒否できる。なお、学生と生徒はこの制度の対象外とされる。

何が変わるのか――労働者への影響

この法案が施行されれば、フレックスワーカーは自らの収入と勤務時間についての予測可能性を持てるようになる。具体的には:

  • 毎月最低限の収入が保証されるため、生活設計がしやすくなる。
  • 仕事とプライベートのスケジューリングが立てやすくなる。
  • 長期的には正社員契約に移行できるチャンスが増える。
  • 住宅ローン申請や賃貸契約がしやすくなる。

「収入と勤務時間に確実性があれば、将来の計画が立てやすくなる。家を買うこと、家庭を持つこと――それが可能になる。」とオランダの社会問題・雇用大臣は述べている。

施行時期と今後の展望

この法案のうち、「派遣労働者への同等待遇」の項目は2026年1月に先行して施行され、他の改革は2027年1月に全面施行される。これは、政府、労働組合、経済界の間で長年にわたり交わされてきた議論の成果であり、オランダの労働市場は今、フレックス重視から安定重視へと大きく舵を切ろうとしている。この動きが実現すれば、多くの若者や非正規労働者が「未来を描ける社会」に一歩近づくことになると期待されている。

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