市中心部とDe Pijp地区が対象、観光公害への対策として
オランダ・アムステルダム市は、観光公害(オーバーツーリズム)への対策として、市民が自宅を観光客に貸し出す「ホリデーレンタル(バケーションレンタル)」の日数制限をさらに厳しくする方針を示した。新たな案では、これまで年間30泊まで認められていた貸し出しを、特定地域においては年間15泊までに縮小する。
この規制は2026年4月から施行される予定であり、市の中心部およびDe Pijp(デ・パイプ)地区などが対象となる。これらの地域では、近年観光客による騒音や混雑などの被害が住民から多く報告されていた。
規制強化の背景と「エスカレーションラダー」
アムステルダム市は、2014年以降、ホリデーレンタルの抑制に取り組んできた。これまでにも許可制・登録義務・事前届出制が導入されており、住民は自宅を貸し出すために、正式な登録番号と許可証を取得しなければならない。また、レンタル可能日数は当初の年間60泊から、2019年には30泊へと段階的に削減されてきた。
こうした規制は「エスカレーションラダー(段階的強化方針)」という市の方針に基づくものである。観光による住環境への影響が一定の閾値を超えるたびに、次の規制が導入される仕組みだ。今回の15泊制限はこのラダーの一段階であり、さらに状況が改善されない場合は、3年間のホリデーレンタル全面禁止措置も検討されている。
「サブレット」はこの規制の対象になるのか?
アムステルダムでは、サブレット(又貸し)も広く行われている。特にKamernetやParariusなどの賃貸プラットフォームでは、期間限定のサブレット物件が日常的に掲載されており、例えば「1〜6か月の一時滞在」などが多く見られる。
しかし、こうしたサブレットと、今回の規制が対象とする観光目的の短期レンタル(Airbnb等で数泊の貸し出し)は性質が異なる。市のホリデーレンタル規制は、あくまで観光客向けの短期滞在(〜15泊)を制限するものであり、中長期的なサブレット(学生・インターン向け等)は、現時点では対象外とみられる。
ただし、賃貸契約に違反して無許可でAirbnbに掲載するような違法サブレット行為は、今回のホリデーレンタル規制とは別の文脈で、引き続き市から摘発の対象となる可能性がある。正式なサブレットを行うには、貸主(オーナー)の許可が必要であり、多くの賃貸契約では明確に禁止されている点にも注意が必要である。
Airbnbの反発「ホテルこそ問題である」
この新たな規制に対し、ホリデーレンタル仲介大手のAirbnbは反発を示している。同社は、「アムステルダム中心部における宿泊のうち、Airbnbにおける貸切物件は約2%に過ぎない」と主張し、ホリデーレンタルではなくホテルの宿泊数こそが問題の本質であると述べている。
その他の観光規制措置も進行中
アムステルダム市は、ホリデーレンタル規制以外にも観光抑制策を次々と打ち出している。過去には「Stay Awayキャンペーン」(若者の観光自粛を呼びかける広告)や、運河クルーズの削減計画などが導入された。また、新規ホテルの客室増設禁止や、コーヒーショップの分散配置なども実施されている。
これらの動きはすべて、「住民の生活の質を守る」という目的のもとに進められており、今後もアムステルダム市は観光と地域社会のバランスを模索し続けるものとみられる。