■ オランダで郵便配達の見直しが進行中
オランダの郵便サービスが、大きな転換点を迎えようとしている。これはオランダの郵便会社であるPostNLが「近い将来、郵便配達は週2回に縮小される可能性がある」と語った為である。
現在は月曜から金曜の週5日体制で手紙が配達されているが、「もはや時代に合っていない」として見直しの必要性を訴えている。
■ 「誰も望んでいないサービス」にかかるコスト
「誰も望んでいない5日間の公共サービスを我々は続けている。今の社会にはもうそぐわない」とPostNLは述べている。
オランダの郵便制度は2007年に制定された法律に基づいて運用されているが、それはスマートフォンやWhatsAppなどの即時通信アプリが普及する以前のものである。PostNLは、こうした技術的変化を踏まえ、郵便に関する法制度を現代化すべきだと主張している。
■ 利用者は減少傾向でも、郵便は依然存在価値を持つ
PostNLの郵便部門は、2025年に赤字に転落する見通しとなっており、同社の株価はすでに1枚の切手の価格を下回っているという。
それでもなお、オランダ国内では年間約16億通の手紙が送られており、「紙の郵便がすぐに消えることはない」とPostNLは強調する。
特に高齢者やデジタルに不慣れな人々にとって、物理的な郵便物は重要な情報源であり続けている。
■ 「少なくとも届ける」姿勢を維持しつつ効率化へ
フェルハーゲンは、「配達員はこれからも玄関先までやって来る。ただし、頻度は減る。それが、依存している人々に郵便を届けつつ、現代のニーズに合致させる方法である」と述べている。
郵便の完全廃止ではなく、アクセスを維持したまま効率化するという立場である。
■ デンマークでは郵便配達そのものを廃止へ
このオランダの動きは孤立したものではない。ヨーロッパ各国では、郵便制度の見直しが加速している。
特にデンマークでは、2025年末をもってすべての手紙配達を終了することがすでに決まっている。
21世紀初めから手紙の量が90%以上減少し、郵便サービスは採算が取れなくなったためだ。
デンマークの国営郵便ポストノルドは、これにより400年続いた配達の歴史に幕を下ろす。
■ ドイツでも進む構造改革
ドイツにおいても郵便の利用は大幅に減少しており、大手のドイツポストは2024年4月に8000人規模の人員削減を発表した。
これらの動きは、デジタル化によって物理的な郵便の役割が縮小される一方で、公共インフラとしての再定義が求められていることを示している。
■ ヨーロッパにおける「紙の手紙」は過去の遺産となるか
このように、欧州全体で「手紙を出す・受け取る」という行為そのものが急速に変わろうとしている。
高齢者やインフラが整っていない地域への配慮は不可欠だが、郵便制度はデジタル社会に適応せざるを得ない時代を迎えている。
オランダの郵便も、近いうちにその在り方が根本から見直されることになるだろう。郵便が“ノスタルジー”となる日も、そう遠くはないかもしれない。