VanMoofが倒産したのは2023年夏。ハイテクな電動自転車で世界的に注目されていたブランドが、突如として沈んだ。オランダ発のスタイリッシュなデザイン、自社開発のパーツ、スマホのアプリ連動の未来感……それらは同時に、サービスの難しさとコストの高さを意味していた。
倒産後、多くのユーザーが修理を断られ、注文済みの自転車が届かず、SNSには怒りと失望が溢れた。
そんなVanMoofが、今まさに生まれ変わろうとしている。再出発のカギを握るのは、F1の技術を背景に持つマクラーレン・アプライド。その傘下で、VanMoofはただのブランド再建ではなく、「構造的な再構築」に挑んでいる。
“VanMoof 2.0”はどこが違う?
1. 自転車の中身が地味に大幅リニューアル
見た目はあのVanMoof。フレームの形も、マットカラーの質感も、ブーストボタンも健在。でも中身は別物。
新たに登場したモデルは、内部パーツの多くが刷新されている。防水性能アップ、モーターブラケット強化、サドル固定の改善、ソフトウェアの安定化など、かつての“壊れやすいバイク”とは一線を画す仕様になっている。
マクラーレン傘下ということもあり、今後はF1由来のバッテリー制御やモーター制御技術も徐々に取り入れられる予定。もはや電動アシストというより、“電動スポーツマシン”の域に近づいている感がある。
2. 独自パーツ地獄からの脱却
旧VanMoofの致命的な問題、それは全部独自設計だったこと。修理には専用のパーツと専用の知識が必要で、街の自転車屋ではお手上げだった。
新体制では、その方針を真逆に変更。今後のモデルでは可能な限り汎用パーツ(例:Shimano製ブレーキなど)を活用しつつ、VanMoofらしさはキープする方向に舵を切った。つまり「街の自転車屋で修理できるVanMoof」へ。
3. サービス拠点が全国に広がる
再出発後のVanMoof最大の特徴は、「どこでも修理できる」こと。
これまでの直営店モデルを捨て、現在はオランダを中心に自転車店との提携による修理ネットワークを構築中。すでにヨーロッパで100ヶ所以上が稼働している。
これにより、ユーザーはこれまでのようにVanMoofの直営店まで持っていかなくても、近所の提携店で修理という流れが可能になった。しかも、VanMoof公式からマニュアルと専用ツールの提供もあり、技術水準も担保するようにしている。
“ちゃんと使える”VanMoofが戻ってきた
スタイリッシュで未来感のあるVanMoofは、たしかに魅力的で人気となっていった。でも「乗りたい」よりも「壊れそう」というイメージが先行し、次第に市場から信頼を失ったのも事実。
新しいVanMoofは、同じ姿をしているけど、まったく違う哲学で動き始めている。
販売エリアを絞り、サポート体制を整えてから売る。過去のモデルはあっさり切り捨て、信頼できる製品だけを出す。壊れたらすぐ直せる環境を整える。
つまり、“夢”から“実用”へと進化したのが今のVanMoof。
また新型のeスクーターや、高速モデルのVanMoof Vなども予定されている。電動モビリティの未来に、VanMoofはもう一度本気で勝負を挑もうとしているが結果はどうなるだろうか。