オランダの主要政党VVDと3つの野党が、フリーランス(自営業)の定義を明確にする新たな法案を共同で提出した。この動きは、税務当局が偽装自営業者に対する取り締まりを強化したことにより、フリーランサーやクライアント企業の間で不安が高まっていることを受けたものである。
法案の背景と目的
近年、オランダではフリーランスとして働く人々が増加し、現在では約120万人がフリーランサーとして活動している。しかし、一部の企業が本来従業員として雇用すべき労働者をフリーランスとして扱う「偽装自営業」の問題が浮上していた。これにより、社会保障費の未払いなどの問題が生じており、税務当局は2025年1月から取り締まりを強化している。
だが、現行の自営業の定義が曖昧であるため、フリーランサーと企業の双方が法的な不確実性に直面している。多くの企業が罰則を恐れてフリーランサーとの契約を避ける傾向があり、これがフリーランサーの仕事の機会を減少させている現状がある。
法案の主な内容
新法案は、ベルギーの制度を参考にし、以下の3つの主要なテストを導入することで、自営業者の定義を明確にしようとしている。
- 個人の状況の評価: フリーランサーが複数のクライアントを持っているか、職業に必要な道具を自分で所有しているか、商工会議所に登録しているかを確認する。
- クライアントとの関係性の評価: クライアントとの関係性を評価しフリーランサーが独立して作業しているか、固定の労働時間があるか、上下関係が存在するかなどが問われる。
- 業種の特性の考慮: 業種特有の状況を考慮し、例えばベルギーでは、輸送業で自分の車両を所有していない場合は従業員と見なされる。
この法案は、フリーランサーの権利を保護し、全ての労働者に公平な競争の場を提供することを目的としている。政党側は、フリーランサーの権利を守りつつ、すべての労働者に対して公平な競争環境を保つ必要があると主張している。労働組合から懸念されている、フリーランサーが正社員の報酬や社会保障費を下回る条件で働くことによる「ダンピング効果」にも対応する構えである。
フリーランサーへの影響
この法案が成立すれば、フリーランサーは以下の義務を負うことになる。
- 十分な年金の積み立て: 将来の生活に備えて、適切な年金を積み立てる必要がある。
- 労働不能時の備え: 病気や事故で働けなくなった場合に備えて、保険の加入など十分な保障を用意する必要がある。
さらに、現在大幅に縮小されてきた自営業者向けの税控除(自営業控除)は、完全に廃止される予定。
今後の展望
議会では、偽装自営業者の問題について、政府が独自の提案を準備している中、今回の法案についても議論が行われる予定だ。フリーランサーや企業は、今後の法的枠組みの変化に備え、適切な対応を検討する必要がある。
オランダにおけるフリーランスの定義を明確にする今回の法案は、フリーランサーと企業双方にとって重要な意味を持つ。法的な明確性が増すことで、フリーランサーは安心して活動でき、企業も適切な形でフリーランサーを活用できるようになることが期待されている。