キャッシュレス化が進むオランダ。ヨーロッパの中でもキャッシュレス決済が最も進んでいる国の現状と背景。

オランダはヨーロッパの中でもキャッシュレス決済が最も進んでいる国の一つとされる。欧州中央銀行(ECB)の調査によれば、ユーロ圏全体では店頭支払いの52%が現金で行われているが、オランダではこの割合が22%にとどまり、他国と比較して著しく低い水準にある。

オランダ国内の支払いの大半はキャッシュレスで行われ、デビットカードやモバイル決済が主流となっている。特に、モバイル決済の利用率は2022年の3%から2024年には6%に倍増しており、国内で普及しているiDEAL(デビットカード決済)やTikkieといったデジタル決済サービスがこの成長を支えていると言える。

Tikkieはオランダで広く利用されているモバイル決済アプリの一つ。ABN AMRO銀行が提供しており、友人や家族間での少額の支払いを簡単にリクエストしたり受け取ったりするためのツールとして人気を集めている。

このアプリの特徴は、特定の銀行口座を持っていなくても利用できる点にある。Tikkieを使って請求リンクを生成し、そのリンクをWhatsAppやSMS、メールで相手に送ることで、相手が簡単に支払いを行える仕組みになっている。支払いはiDEALを通じて行われるため、セキュリティ面でも信頼が高い。

例えば、友人同士でレストランの食事代を割り勘したいときや、旅行費用を分担する際に、誰がいくら支払うべきかを明確にし、迅速に処理できる。特にオランダでは、割り勘文化が根付いていることもあり、Tikkieのようなアプリが日常生活の中で重要な役割を果たしている。

その手軽さと効率性から、若い世代を中心に利用が広がり、ビジネスシーンでも小規模な取引で活用されるケースが増えている。Tikkieは単なる支払いアプリにとどまらず、オランダのキャッシュレス社会を支える重要なツールの一つとなっている。

また、オランダ国民が日常的に持ち歩く現金の平均額は35ユーロに過ぎず、ヨーロッパ平均の59ユーロを大きく下回る。この数字からも、オランダがいかにキャッシュレス社会へと移行しているかがわかる。さらに、非接触型決済が一般化しており、デビットカードやスマートフォンを使った支払いが日常的に行われている。

一方で、ユーロ圏全体を見ると現金支払いの割合が依然として高く、特にマルタ(67%)、スロベニア(64%)、イタリア(61%)などでは現金の利用が主流である。このような状況を背景に、ECBはデジタルユーロの導入を検討しており、現金とデジタル通貨を併存させることで、公共の支払い手段の選択肢を確保する方針を示している。

オランダのキャッシュレス化がここまで進んだ背景には、金融インフラの整備やデジタル決済サービスの普及、国民のデジタルリテラシーの高さが挙げられる。これらの要因が重なり、オランダはヨーロッパにおけるキャッシュレス社会の最前線に立つ国として注目されている。

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