フリーランス規制強化がもたらすオランダの公共セクターへの影響
2025年の「偽装自営業防止法(DBA法)」施行の強化により、オランダのフリーランス市場が大きく揺れ動いている。税務当局の取り締まり強化を背景に、多くの自営業者が自主廃業を選び、あるいは派遣会社を通じた働き方に移行する動きが広がっている。
自営業者の激減と派遣会社への移行
2024年12月、オランダ商工会議所(KVK)が発表したデータによれば、21,000人以上の自営業者が廃業し、前年同月比で54%増加した。一方で新規登録者数は14,000人余りと13%減少し、フリーランス市場は大きな転換期を迎えている。この傾向の背景には、雇用関係規制法(DBA法)の影響がある。法の施行により「偽装自営業」を防ぐ取り組みが進む中、多くの自営業者が派遣会社を通じた雇用にシフトしている。
ABN AMROの報告によれば、医療、教育、保育といった公共セクターではフリーランスの利用が盛んで、約25.5万人のZZP(自営業者)がこれらの分野で働いている。しかし、派遣会社を介した雇用が増加することで、これらのセクターのコストが急増しているという。
コスト増が引き起こす課題
派遣会社を通じた雇用がコストを押し上げる主な要因は、VAT(付加価値税)の存在だ。フリーランスはVATの対象外であるが、派遣会社を通じた雇用では21%のVATが課される。このため、公共セクターの組織は派遣会社を通じた労働者の雇用に追加の費用を負担しなければならない。
オランダの大手銀行ABN AMROのによると、「派遣会社を介したフリーランスの雇用は、VATと派遣会社のマージンにより、医療、保育、教育分野での一時雇用コストを合計で39%高くしている」とのことだ。このコスト増加が病院や学校、保育所における人手不足をさらに悪化させる可能性が懸念されている。
フリーランス市場の不安定化と労働市場への影響
また新法の影響で38%のフリーランスが仕事を失ったと報告しており、2024年9月時点の25%から大幅に増加した。また、18%のフリーランスが自営業を辞め、正社員としての雇用を検討している。これは労働市場全体に不安定化をもたらす要因となっている。
規制とコストの均衡を求めて
政府が医療、保育、教育分野で派遣会社を通じた労働者に対してVAT免除を適用することを提案している。この措置により、3億ユーロの税収減少はあるものの、労働市場への影響を緩和し、これらの重要なセクターのコスト負担を軽減できるとされている。
また政府は病院や初期医療、派遣会社を通じた労働者のいずれであっても、人材が十分に確保され、アクセス可能で手頃な価格で提供される状況を維持するべきだと指摘されている。
フリーランス規制の強化により、オランダの公共セクターは大きな試練に直面している。一方で、この規制は労働市場の透明性と公平性を高める契機ともなり得る。政府と産業界が協力し、持続可能な解決策を模索することで、医療、教育、保育の分野が引き続き手頃で利用しやすいものとなるよう、今後の動向に注目が集まる。