オランダの小売業界にまたしても大きな衝撃が走った。1896年に創業された老舗小売チェーン「ブロッカー(Blokker)」が、アムステルダムの裁判所によって正式に破産と宣告された。国内で約400店舗を展開し、3,500人の従業員を抱えるブロッカーの店舗は、現時点では年内まで営業を続ける見通しであるが、オンラインショップは既に閉鎖されており、今後は一部店舗または在庫の売却によって債務返済を目指す方針である。
財務の危機と度重なる打撃
ブロッカーの破産は、同社にとっての困難な状況の集大成といえる。コロナ禍によって巨額の税金支払いが累積し、今年初めには米国の再建専門企業「ゴードン・ブラザーズ」から3,500万ユーロの融資を受けたものの、それでも経営再建には至らなかった。さらに、オランダの大手会計事務所KPMGも、同社が秋までに財政的に厳しい局面を迎えると警告していた。
店舗と従業員への影響
- 約400店舗が一時的に営業を継続
- 約3,500人の従業員の雇用が危機に
- オンラインショップは完全に閉鎖
実店舗は当面の間営業を続ける。これはブロッカーの(一部)売却の可能性を視野に入れているため。しかし、オンラインでの購入はできなくなっている。
オランダ小売業界で相次ぐ倒産
今回のブロッカーの破産は、オランダ小売業界の大きな構造的変化を反映している。近年、オランダ国内で広く知られる小売チェーンが次々と閉店・倒産の憂き目に遭っている。オランダの日用品を扱う小売業界は、国際的な競争と消費者行動の変化に大きく影響を受けている。
- BCC(電気店):2023年9月に破産
- The Body Shop:最近破産
- Bristol(靴店):2024年8月に80店舗を閉鎖
- Esprit、Adam en Duetz:オランダから撤退
- Perry Sport、Big Bazar、Scotch & Soda:2023年に閉店
顧客への対応と今後の展望
ブロッカーの破産管理者は、少しでも債務の返済を進めるために、年内まで店舗営業を継続する計画を立てている。オンラインでの注文は停止されているが、商品ラインナップの確認はオンラインで可能である。ギフトカードの使用も一部制限があるものの可能とされており、既に注文を確定させた顧客には商品が届けられる予定となっている。
また、ブロッカーは今後、同社全体または一部の売却を検討しており、他の小売業者がブロッカーの店舗やブランドを買収する可能性も模索されている。しかし、破産によって従業員は解雇のリスクにさらされており、多くの従業員が退職手当を受け取れない状況にある。
オランダにおける小売業界の終焉と新たな局面
ブロッカーの破産は、単に一企業の崩壊ではなく、オランダ小売業界の転換期を象徴している。同社は1896年に「Goedkoope IJzer en Houtwinkel(安価な鉄・木材店)」として創業され、1975年以降はヤープ・ブロッカー氏の指導のもと、複数の小売ブランドを抱える一大帝国に成長。しかし、ブロッカー家は2019年に経営権を手放し、その後の経営はミラージュ・リテール・グループのもとに引き継がれた。
長年オランダの街角で親しまれてきたブロッカーがその歴史に幕を下ろすことになり、オランダ国民にとっては大きな衝撃となっている。ブロッカーの破産は、オンライン競争の激化や消費者の購買行動の変化など、小売業界が直面する課題を反映している。この出来事は、伝統的な小売業が生き残るために、いかに革新と適応が必要かを示す重要な例となっている。